スポーツにおける重大事故発生の判断と対応


 スポーツにケガはつきものです。時に重大なケースに遭遇する可能性もあります。

そのような時、現場では素早い対応が必要です。医療関係者(チームドクターやベテランのトレーナーなど)がいたりすればよいですが、練習中などなかなかそのような環境は備わっておりません。

しかし、重大事故への判断と対応を、チーム関係者は知っておく必要があります。
ここでは、流れを確認してまいりましょう。

①意識確認

 まずは、意識確認をするため声掛けをしましょう。

このとき気を付けることは、いきなり動かさないことです。

頚髄、脊髄損傷の恐れがあるため、動いたときに損傷がひどくなってしまう可能性があるからです。特に頸部は動かさないようにします。まれに、受傷者が気がついたとき、すぐに起き上がろうとします。受傷者の体、もしかは頭部をやさしく抑えてておきましょう。

呼びかけにも反応しないときは、軽く肩などをたたき、刺激をします。
この時も返事がなかったり、不適切な応答である場合は意識なし・低下として判断して、直ちに119番通報を要請しましょう。

仮に意識があった場合でも、油断しないでください。
周りが慌てると、受傷者が驚いてしまいパニックを起こしてしまう可能性もあります。
本人がショック反応を起こと、血圧・脈拍・呼吸が変化してしまうこともあります。
状況にかかわらず、安心できる声掛け・対応をする配慮も必要です。

②呼吸

 意識確認の次は呼吸の確認・確保です。

うつ伏せで倒れているときは、仰向けにするのですが、これも大変重要です。先ほど述べたように、頚髄・脊髄損傷の可能性があり、悪化させてしまうかもしれないからです。

体位変換の詳細は、また別のところでご紹介いたしますが、基本は頸部を、やや牽引をかけながら、頸部を前屈・後屈・捻じらず、一本の丸太を回転させるように仰向けにいたします。なので一人では行わず、3~4人で受傷者をゆっくり仰向けにして、頸部を中間位にします。
そして、気道を確保しつつ、頭が動かないように両手で押さえておくか、あればネックカラーを使用します。

次に気道の確保。傷病者の口に耳を近づけ、ここでも呼吸音が聞こえるか確認します。
また、このタイミングで脈の有無も確認しておきます。
呼吸音がなければ人口呼吸を始めます。頸部に気をつけながら、やや、受傷者の顎を上げ気道を広げます。
2回吹き込みながら、胸が膨らむかどうか見ます。膨らむようでしたら入ってます。しっかり入っていれば、目で見てもわかるくらい膨らみます。
ただ、現在では感染症のおそれがある観点から、必ずしも行わなくて良いともあります。

③脈拍

 脈拍をみるときは、頸動脈、橈骨動脈などがありますが、慣れていないなら、心臓に直接耳を当てて聞くのが早いです。呼吸がなくても、心臓が動くことがあります。自発呼吸ができなかったり、のどに異物が詰まってるということもあるので、呼吸なし=心停止と決めつけないでおきましょう。

心臓マッサージの詳細は述べませんが、30回に一度人工呼吸の感覚で行います。大体1分間で100~120回のペースです。

これを救急隊が駆けつけるまで続けていきます。一人ではかなり大変なので、協力者を準備させておくようにしましょう。

④脊髄損傷の有無

 意識がある、戻った場合でも、脊髄損傷に気をつけます。

一度、脊髄が損傷をうけると、四肢の麻痺や、下半身麻痺などの後遺症が起こる場合があります。それだけではなく、呼吸中枢もあるので、動いたために損傷が悪化して、急変するケースもあります。十分気を付けましょう。

 まずは寝たまま損傷の有無をチェックします。四肢の触られている感覚はあるか、足は動くか、手は動くか、指は動くか、痺れはあるかなどです。

十分に状態の安定が確認できた場合、担架などで外へ運び出します。



 仮に命・脊髄に問題がなかったとしても、長く倒れこんだ場合は、十分注意が必要です。頭部にダメージがあった場合、時間が経ってから症状が出る場合もあり得ます。(脳震盪

他にも以前、私が現場にいた時に、腹部を強打して倒れこんだプレーヤーがいました。

プレーをやめて安静にしており、特に問題はなかったのですが、少し様子が変でしたので受診してもらったところ、腎臓破裂しており、緊急入院したケースがありました。


スポーツは楽しいですが、日常生活にはない動きもあり、時には激しくなります。
重大事故は非常にまれなケースですが、取り返しがつかない分、判断と対応を必ず確認をしておきたいことです。

不安な時はすぐに119番へ連絡し、指示を仰いでもらいましょう。、可能であればそのまま電話を切らずに、状況を逐一知らせて、指示をしてもらうのも心強いかもしれません。



コメント

このブログの人気の投稿

高齢者の運動するポイント 2

サッカーにおけるケガ

ケガした時の応急処置"RICE"