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5月, 2022の投稿を表示しています

『痛み』に対する考え方

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 アスリートに限らず、皆さん身体のどこかに痛みを抱えている方は多くいます。 ハードなトレーニングをして、仕事をして、など日常的に痛みを抱えることは珍しくはないですね。  この時、ほとんどの方は我慢してトレーニングや仕事を続けているのではないでしょうか。 そして痛みが強くなると抗炎症薬や湿布などを使い、我慢が限界になるまでさらに続け、やがて動きに大きな支障をきた頃にやっと、治療院へ駆け込むようになります。  また、この痛みを感じている中で、ほとんどの人は『この痛みが何であるか?』は見ようとしません。 実際痛みとは悪者であり、また感じないほうが良いものなのでしょうか?  身体は賢いものです。 痛みは身体にとって良くないことへの警告なのです。 魔法のように痛みを一瞬で治ることが多くの人々に求められていますが、永続的に無痛の効果が続くことはほとんどありません。 痛みは煩わしい、邪魔な存在のように感じられますが、身体が何か『正常ではありませんよ』との合図なのです。  これが車ならどうでしょうか。 目の前で見慣れないランプがついたり、また異常な音が聞こえるようであれば、直ぐに専門家へ修理を依頼するでしょう。  けれども身体の痛みに関して調べる、休むという事を嫌がる人は多くいらっしゃいます。 不良なアライメント、姿勢、動きはエネルギーを誤った方向へ向かわせます。 その結果、一部の組織に負担がかかり続け、損傷へとつながる可能性を高くするのです。 基本的に大部分のエネルギーを受け止める、つまりストレスを受け止めるのは筋が引き受けます。 なので運動後に一時的に痛みを発しますが、筋には十分な血流があるため、時間を要しますが通常は回復することができます。 栄養素を運び入れ、老廃物を運び去ってくれる。血流の多い筋肉は修復を比較的早く行えます。程度にもよりますが・・・ しかし、この筋が痛みや不良な動きによって上手く活動できないと、ストレスは関節にかかってしまい、徐々にしつこい痛みが増してくる結果となります。 関節、腱、靭帯などの組織には血流が少ないので一度損傷すると回復には筋よりも時間を要します。  そこで、早めに痛みを引き起こしている原因を知ることが重要です。 一度に強い外力で損傷したので有ればわかりやすいですが、上記のように徐々に負担がかかる場合、原因を探る必要があります。 さもなくば回復

ウィーク・リンク?とは

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   アスリートにとってケガはその後の競技人生の分かれ道。 乗り越えるか、打ち負かされるか。 しかし、考え方によってはケガによって弱点を見つける良い機会でもあります。そう考えたいです。。。そう考えましょう。。。  明らかに外傷を負ってしまう場合もありますが、徐々に負担が積み重なってケガをする場合もあります。後者の方が多いかもしれません。 これは予防可能なことがあります。 ウィークリンク  身体の動作連鎖が弱いという意味です。 つまり、一つの動作を行うとき、体の一部分が上手く使えず(無意識に動きを誤魔化している)、他の部位に負担をかけてしますことです。  私はこの考えのもと選手をサポートします。まず、このウィークリンクを見つけだし、パフォーマンスの改善を図ります。  小さいストレスが長期間身体に加わる事で、微細損傷が起こります。バイオニクスの不良があり、オーバートレーニングが続くことで身体に負担がかかり、いずれは損傷へとつながります。 バイオニクスの不良とは、不適切な関節アライメント、筋の協調、姿勢を代償的(かばって)に使う動作ミスのこと。  普通、自分では気が付かないため、一見パフォーマンスにも影響はないように思われます。また、周りに選手やコーチなどでも気が付かないことが多いです。 通常オーバートレーニングだけでは大きな損傷にはつながりにくいです。 例えば長時間練習しても同じ体の右側は痛むが左側は大丈夫ということもある。 ウィークリンクは不適切な運動パターン、持久力不足、協調の誤り、スキル不足、柔軟性の欠如などによって引き起こされます。  全体のバランスは大切です。 筋力、柔軟性、スピード、パワー、スタミナ。これらのバランスが良くないと効率がわるく、様々な分野が低下します。  なので身体の評価は大切です。 客観的、主観的に自身を振り返ってみて、弱いところが見られたら課題に対して取り組むことが大切です。 選手がスピードをアップさせたいと希望するとき、安易にパワートレーニングを取り入れても改善しないかもせれません。問題がパワー不足ではなく、柔軟性に問題があるというときもあります。 下肢を踏み出す時の歩幅が狭く、うまく力を発揮できていないという場合です。もしくは、上肢・体幹・下肢を連動させる協調性に問題があるのかもしれません。 エネルギーの漏出  ある動作(例えば走るとき

身体のリカバリーについて

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   前回オーバートレーニング症候について書きました。 今回はリカバリー方法についてです。  以前はトレーニングすればするほど力がつき、逆に休むとレベルダウンしてしまうという風潮がありました。しかし、今ではリカバリーはトレーニング効果を上げるために必須であると考えられ、トレーニング計画の一部に組み込まれているようになっております。  コンディションを整え、いい状態でトレーニングを行うことでレベルアップしていくことが、様々な研究からでも実証されております。 ではどのようなリカバリー方法があるのか確認してきます。 アクティブリカバリー  ジョギング、水泳、自転車など有酸素運動をおこなうことで、血流を促進し、乳酸などの代謝副産物を除去する効果があります。ゆっくりと休んで安静にしているよりも、より効果的とされています。 これはゲーム形式の楽しめる運動や、普段の競技と違うスポーツをやっても良いでしょう。  研究の一例によっては高強度(乳酸閾値60〜100%)のランニングの方が乳酸除去されたとされた場合もあります。 今のところこのリカバリ方法が一般論で、実践されておりますが、研究をもっと深める必要があります。 水浴療法  お風呂にゆっくりつかるよりも、冷温交代浴がリカバリー効果があるとされております。自律神経に働きかけ、血流を促進させます。  効果の有無の研究結果は様々ですが、40℃と15℃の温冷浴を1分ずつ6〜12分が良いのではないかと言われております。 睡眠  睡眠不足が続くと内分泌や免疫系に影響が大きく出ます。また、神経も過敏状態となり、交感神経優位の状態となり、回復の大きな妨げともなります。 睡眠不足はひどく倦怠感や疲労感を感じ、アスリートやコーチの間でもリカバリー過程の中で、睡眠は不可欠な要素ではないのでしょうか。 サウナ  最近流行していて、施設が急増しております。サウナ後はさっぱりとするという感想が多く聞かれます。 その中で気を付けたいことは、脱水や過剰なり用時間などに注意していただくことです。適度な水分補給、サウナ前後の飲酒、上限となる時間(5~25分)以上いないことを守ってください。  血流増大による効果の可能性があるとされています。 マッサージ ストレッチ  広く用いられているマッサージやストレッチですが、実は科学的には効果が見られないという結果が多くみられ

オーバートレーニング症候群

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 目標を掲げ、熱心に取り組む。素晴らしいです。 様々な情報が手に入れやすく、早い年齢からでも明確な目標が持ちやすいです。 しかし、中には頑張りすぎて疲労が抜けなくなってしまうこともあります。 オーバートレーニング症候群。 今回はこれを確認してゆきます。 定義  スポーツなどで生じた生理的疲労が、十分に回復しないまま積み重なり、引き起こされる慢性疲労状態。 症状は ・競技パフォーマンスの低下 ・全身の倦怠感、疲れやすい ・睡眠障害 ・食欲不振、体重減少 ・集中力の欠如 ・安静時の心拍数、血圧の上昇                                      などが見られます。 医療的に説明ができないパフォーマンスの低下状態であります。 分類  レベルアップにはある程度の負荷が必要です。狙いをもって、回復できる範囲の負荷をオーバーリーチングと言います。 機能的オーバーリーチング・・・数日から数週間で回復 非機能的オーバーリーチング・・・数週間から数ヶ月で回復 オーバートレーニング症候群・・・数ヶ月以上経過しても回復ができない 上記のようにいくつか分類されます。 ただ、ハッキリとした境目は未だに分からず、課題となっています。メンタルな部分もあるので、どうしても疲労を数値化するのは難しいのです。  症状としては”定義”の中で記しました。 最近ではこれを数値化しようといくつか目安となるものができてきてます。 医療では内分泌(ホルモン)、血中アミノ酸などの数値を調べ、通常値と比較して疲労度を測ります。  また、手軽なところでは日頃より定時に心拍数、血圧など測り、比較することや、自覚的運動強度(RPE)などつけておくとわかりやすいです。 さらには心理テスト(POMSやDACA3など)も活用すると早期に気が付きやすいです。  しかし、非機能的オーバーリーチングとオーバートレーニング症候群の境目は専門家にも難しい判断です。 負荷が軽すぎてもレベルアップできないので、選手、コーチ、スタッフ、家族それぞれコミュニケーションをとって、個人を観察してゆくことが望まれます。 予防  症状として気が付きにくく、オーバートレーニング症候群にかかっている場合もあるので、日頃より予防して早期に気が付けるようにしておきたいです。 対策例といたしましては ・パフォーマンスの記録をつける ・過

肩関節 前方脱臼

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   先日、肩関節前方脱臼の患者さんがいらっしゃいました。今回が三回目だということです。 整復、固定をいたしましたが、今後も繰り返す可能性が高く、その都度生活に支障が出ることをお話しいたしました。 以前も医師より言われていたらしく、そのため今回のケガを機に、手術を前提として整形外科へ診察を受けるということでした。 今回は肩関節の前方脱臼について確認してゆきます。 発症メカニズム  肩関節(肩甲上腕関節)は上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩からなる球状関節で、体の関節の中で一番広い動きをします。  骨頭の大きさが肩甲骨関節窩の約三倍あり、関節包は緩くなってます。周りの靭帯もほかの関節と比べて弱いため、関節の安定性は腱板という組織に依存しています。  発生しやすい状況は、肩関節を外転・外旋・伸展した状態で、手をつき転倒した際の介達外力によって脱臼の発生率が高まります。  稀に後外側からの直達外力によっても脱臼することもあります。(不意に後ろから強い力でぶつかられたとき) 病態  肩関節前方脱臼の時おこる損傷は ①関節包損傷 ②関節唇損傷 ③肩甲下筋損傷 ④関節窩骨折 ⑤上腕骨頭後外側骨折   などがあります。  前方脱臼には 関節包を破るcapuslar taype と 関節包が関節唇とともに関節窩下縁の付着部で損傷されるcapsular detachment taype があります。後者のほうが反復性脱臼になりやすいです。 症状・治療  痛みはかなり強く、動かすことはほぼできません。 腕の重みだけでも痛いので、逆手で抱えながら痛みを回避します。また、患部は三角筋のふくらみが無くなり、肩峰と呼ばれる肩甲骨の一部が出っぱって見えます。さらには、上腕骨の骨頭が鎖骨の下や烏口突起の下あたりに触れることができます。  この辺りまでは教科書通りですが、実際は完全脱臼だけでなく、亜脱臼ということもあります。これは、完全に外れていなくても通常の位置よりかは多少ずれており、これでもかなりの痛みです。多少動かせることができるので捻挫と間違いやすいですが、整復動作は必要です。また、上腕骨近位部骨折も似た症状がみられますので、鑑別が必要です。  治療といたしましてはなるべく早く整復して元の位置に戻します。時間が経過すると戻しにくくなります。正しく整復できたならば、固定を三週間程度必要です。ある程度動か