肩関節 前方脱臼

 


 先日、肩関節前方脱臼の患者さんがいらっしゃいました。今回が三回目だということです。

整復、固定をいたしましたが、今後も繰り返す可能性が高く、その都度生活に支障が出ることをお話しいたしました。

以前も医師より言われていたらしく、そのため今回のケガを機に、手術を前提として整形外科へ診察を受けるということでした。

今回は肩関節の前方脱臼について確認してゆきます。

発症メカニズム

 肩関節(肩甲上腕関節)は上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩からなる球状関節で、体の関節の中で一番広い動きをします。
 骨頭の大きさが肩甲骨関節窩の約三倍あり、関節包は緩くなってます。周りの靭帯もほかの関節と比べて弱いため、関節の安定性は腱板という組織に依存しています。

 発生しやすい状況は、肩関節を外転・外旋・伸展した状態で、手をつき転倒した際の介達外力によって脱臼の発生率が高まります。
 稀に後外側からの直達外力によっても脱臼することもあります。(不意に後ろから強い力でぶつかられたとき)

病態

 肩関節前方脱臼の時おこる損傷は
①関節包損傷
②関節唇損傷
③肩甲下筋損傷
④関節窩骨折
⑤上腕骨頭後外側骨折   などがあります。

 前方脱臼には関節包を破るcapuslar taype関節包が関節唇とともに関節窩下縁の付着部で損傷されるcapsular detachment taypeがあります。後者のほうが反復性脱臼になりやすいです。

症状・治療

 痛みはかなり強く、動かすことはほぼできません。

腕の重みだけでも痛いので、逆手で抱えながら痛みを回避します。また、患部は三角筋のふくらみが無くなり、肩峰と呼ばれる肩甲骨の一部が出っぱって見えます。さらには、上腕骨の骨頭が鎖骨の下や烏口突起の下あたりに触れることができます。

 この辺りまでは教科書通りですが、実際は完全脱臼だけでなく、亜脱臼ということもあります。これは、完全に外れていなくても通常の位置よりかは多少ずれており、これでもかなりの痛みです。多少動かせることができるので捻挫と間違いやすいですが、整復動作は必要です。また、上腕骨近位部骨折も似た症状がみられますので、鑑別が必要です。

 治療といたしましてはなるべく早く整復して元の位置に戻します。時間が経過すると戻しにくくなります。正しく整復できたならば、固定を三週間程度必要です。ある程度動かせてしまうので早く動かしてしま方もいるのですが、再発を予防するためにも守っていただきます。

合併症と予後

 脱臼したときに上腕骨の一部が剥離骨折するケースもありますので、整復されて肩が動くようになっても、レントゲンは取っておきたいです。

また、比較的若い年齢層10~20代に反復性になりやすいです。年齢が若い分、組織がしっかりしていて、外力も大きいケースが多いからと考えられています。

 また、腋窩神経麻痺という神経症状も起こりやすいです。手の感覚が鈍いなどの症状が出てきます。

手術の有無は状態にもよります。また、個人の生活様式にでも判断されますので医師とよく相談しましょう。

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